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新建ハウジングプラス1にサステナブル住宅賞受賞の記事が事例紹介として掲載されましたが、当初の取材の方向性がわからなかったものですから、取り急ぎ私が受賞の思いや経緯を纏めた文章です。

 結局日の目を見ないことになりましたので、ブログで紹介します。


「工務店が環境系のコンペに挑戦するということ」

■応募の経緯など

 参創ハウテック+カサボン住環境設計で挑んだ第5回サステナブル住宅賞(旧省エネルギー住宅賞)で建築環境・省エネルギー機構理事長賞を受賞しました。同賞は平成4年から2年に一度実施されているIBEC主催の実案件において、多面多角的でサステナブルな提案が求められる環境系の国内コンペでは最もハードルが高く、審査も国内屈指の環境、省エネ系有識者を中心に厳粛に行われています。
 弊社は自立循環型住宅と出会って約7年、比較的省エネには関心が薄いとされる大都市圏で、省エネに向きあいながら都市型工務店として日々研鑽に努めてきました。 そのような中、IBECのWebをよく見るようになり、いつか挑戦しようとその機会を伺っていました。しかし、近年の受賞案件の中には環境工学系の大学研究室との連携がみてとれましたし、弊社のように工務店と子会社の設計事務所という屋台骨だけで、このような賞へ挑戦できるか否か一抹の不安を抱えていたのも事実です。
 結果的には、現段階における弊社の実力を計る良い機会だと考えたことと、私どものような地域工務店が創った実物大の家がどのような評価を受けるのか興味を覚え、応募に至りました。


■サステナブル賞が目指すところ、地域工務店が目指すところ

 求められるのは、住宅の豊かさを維持しながら、いかに長寿命化、省CO2、省エネルギー、省資源、資源循環など環境負荷低減を実現した先導的なサステナブル住宅であるかです。
 断熱・気密に配慮した構造はもとより、耐久性・耐用性を鑑みた長寿命で省資源、資源循環に配慮し、効率的な暖冷房機器の採用にとどまらず、日照、採光、通風、換気、日射遮蔽装置などの建築的手法を効果的に組み合わせた省エネルギー、太陽光や太陽熱など自然エネルギーの利用、雨水利用、排水抑制等の水の有効利用、バリアフリーの考慮、空気汚染のない健康的な室内環境、まちなみに調和し、緑に囲まれた住まいの環境などが求められます。
 私たちのように大都市圏で活動する工務店にとっては、地方都市の家づくりと大きく異なり、法的制限や自然環境などの面でハンデを背負います。そこで自立循環型住宅で学んできたすべてを要素項目と設計段階から建築手法を吟味し、そのハンデを補うための工夫が必要になると考えました。
 また、昨今はスマートハウスや補助事業のゼロエネ推進が注目されていて、創エネ機器頼りになってしまっては、地域工務店の本来の家づくりが流行に呑みこまれていく状況が否めません。
 こうしたようにハード面にのみ傾倒して今近の家づくりを真っ向から否定することはしないまでも、私たち工務店の生業は「設備機器」を売るのではなく、あくまで「家を創る」ということにある訳ですから、今回の提案応募は、工務店としての生き方を再認識する上でも原点回帰する良い機会であったと思うのです。
 普段からモノづくりに携わり、それを自負する地域工務店までもが創エネ機器などの設備機器に頼り切ってしまえば、ただのアッセンブラー(組立て屋)に成り下がってしまうのではないかという危惧もありました。
 今、地域工務店にとって大切なのは、日進月歩で進化するハードにのめり込む前に、もう一度工務店として創意工夫した家づくりを再確認し、必要な設備機器は次の段階で追加するという優先順位が必要なのでないでしょうか?


■パッシブデザインという武器

 パッシブデザインが提唱されて久しいですが、最近では多くの工務店や設計事務所が住宅設計にパッシブデザインを採用しています。辞典でその定義を調べますと、「特別な機械装置を使わずに,建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し,快適な室内環境をつくりだす手法。」とありますが、実はとても奥が深く、1+1=2と言えるような単純な答えはありません。様々な地域の自然条件等を定量化するのは難しいからです。
 定量化が難しいから、手探りの状況でつくり込んでいく作業が必要になります。当然つくり込むためには最低条件のシミュレーションと温湿度データロガーなどを使用した実測が大変重要になります。シミュレーションは設計段階において大変重要な役割を占めますが、それだけではどうしても仮定の数値を簡素化させてしまいます。
 自立循環型住宅の応用を通じて見えてきたのは、完成した家の実測を繰り返しているうちに見えないところが少しずつですが見えてくることです。地道に手間のかかる作業を繰り返しながら住まい手にとっての最適解を見出だすことが、地域特性を知る工務店としての家づくりの真骨頂ではないでしょうか。
 もちろん、創エネや冷暖房機器に頼った家づくりでも数値上は、良い結果を出せます。しかし、最も大切なのは住み心地であり、本当の意味での快適性とは程遠いものだと思います。事実、受賞の対象物件になった建て主様からも、「思った以上に快適だ。」と、評価を戴いております。


■都市型住宅における高度なソフトとハードさらに住まい手のレポートの4つの提案

 今回、賞を戴いた実物件の提案は次のような内容でした。
1、Q値やμ値のみならず、熱回路法を用いた熱収支のシミュレーションソフトSimHeatを用いて、当該計画物件と周辺建物をモデル生成し、相反する夏と冬を温熱の基本性能のスペックを変える事によりエネルギー・自然室温・イニシャルコストの偏差を見極めて複合的且つ包括的に判断しました。そこで、集熱と断熱の最大化に配慮したオープンルーフ(天窓+室内可動扉)を設置し、断熱と遮熱性能のスペックを導き出しました。
2、都市において卓越風は期待できません。周辺環境をみて通風シミュレーションにより卓越風向を読み、風の出入り口を特定し平面形態に投影しました。
また、流量係数を高める為に外部木格子に角度を与え、室内の導風効果を鑑み、木格子等を配置しました。
3、昼光も単位を輝度に設定し、昼光がいきとどいているかシミュレーションを行いました。
4、住まい手にも実際に住み心地レポートを書いて戴き、快適性について最適解を求めることを試みました。


■NCNのSOWE designと参創ハウテックの取組み

 今回のサステナブル賞受賞の背景につきまして、もうひとつ追記しなければならないことがあります。
 一昨年程前からNCN重量木骨の家のメンバー58社とともに、自然エネルギーをダイレクトに取り入れる住宅のパッシブデザインを一緒に勉強・研究してまいりました。こうしたパッシブデザインへの勉強と研究を通じ、都心部の住宅において、自然エネルギーを取り入れる最も効果的な場所である屋根に着目してきました。
 今回受賞した「オープンルーフの家」は、NCNが提供しているSOWE Designの オープンルーフを採用し、建設された1棟目の物件だったことです。
 前述した通り、自立循環型住宅研究会で研鑽してきたことを、NCNのSOWE Designと上手に融合することで、都市型住宅におけるパッシブデザインのひとつのカタチを具現化することが出来たのだと思います。


■工務店は「産学共同」は無理でも、「産住共同」という武器がある。

 今までのサステナブル賞受賞作品の中には、大学の研究機関等との共同によるものも数多く見受けられますが、正直申しまして、地域工務店にそのようなチャンスはなかなか訪れません。
 しかし、その代わりと言っては何ですが、一緒に家づくりをしてきた理解ある住まい手(建て主)が存在します。「産学」ではなく、「産住」共同と言える強いタッグです。今回の応募に関しましても住まい手の強力なバックアップがあったからこそだと思うのです。そして、最も喜んで戴いたのは住まい手ご家族だったのですから。
 日々実務を通してスキルを磨き続ける中で、このように住まい手との共同作業で向き合うことこそが、本来地域に根差した工務店としての生き方だということを実感しました。

2013/03/12(火) 09:13 コラム(改訂版) PERMALINK COM(0)
数年前になりますが、娘が通学していた小学校で「家の近所で秋を見つけてくるように」という宿題が出され、ちょっとした手伝いをしたことがあります。

子供と一緒に秋を見つけようと、近所の紅葉や落ち葉を捜しましたが、学校に提出できるほどの教材が集まらず、結局車で15分程度のところにある川口市のグリーンセンターへ出かけ、やっとの思いで松ぼっくりや栗、そして真っ赤に焼けたもみじの落ち葉などを集めて持ち帰り、親の面目を保ったのでした。


 親である私自身は、そこら中に季節感が転がっている北海道の大自然の中で育ったせいか、「秋を見つける」などと言った、いかにも都会的で高尚な宿題に向き合った経験がなく、「秋」という季節を表現する様々な名詞を捜すと言う行為に、少しばかり詩の世界を楽しむような清々しい気持ちになれたことを思い出しました。
  
春から夏にはクロロフィル(緑葉素)の働きで、新鮮な緑の葉を湛え、朝夕の最低外気温が8℃を下回る季節には、カロテノイドが葉を黄色に染める。さらに5~6℃以下に冷え込むことで、アントシニアンが活性化して葉を真っ赤に染め始めるのです。ちょうど11月初旬から下旬にかけて、幹の先端から赤・黄色・緑の三色を基本にした色とりどりのコントラストが、なんと言っても見事なのです。

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが 見つけた

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

お部屋(へや)は北(きた)向(む)き くもりのガラス

うつろな目(め)の色(いろ) 溶かしたミルク

わずかな隙(すき)から 秋の風(かぜ)

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

 今から50年以上前の昭和30年に作詞作曲された有名な童謡「小さい秋」の二番の詩です。

 現在では北向きの部屋の窓の結露はペアガラスで解決しており、わずかな隙間風は気密を向上させた工法で、冬も省エネで暖かい家に生まれ変わってしまいました。

この詩の語感から読み取れる当時の住宅事情。演歌の「心に吹く隙間風」なら未だしも、今ではまず詩になりえない「家の隙間風」。

家の中からも情緒的な趣は減ってしまったのだと、あらためて納得してしまうのでした。

 ならばせめて、家の敷地内に季節を堪能できる植木を配置し、癒しを求めるのは住宅屋ゆえのおじさんの抵抗なのでしょうか。
2010/10/15(金) 19:05 コラム(改訂版) PERMALINK COM(0)
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